未踏座「鈴木先生」観劇感想
京都 龍谷大学の演劇サークル「未踏座」さんが、有志公演で『鈴木先生』の「@鈴木裁判」を演劇でやってくれました! 感想書きます。
場所:龍谷大学学友会館三階大ホール
2009年9月
18日(金)17:30〜
19日(土)13:00〜/17:30〜(ぼくの観た回)
20日(日)17:30〜
21日(月)17:30〜
入場料無料
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何とか無事締め切り通り@生徒会選挙編エピローグを完成させ、連休に、京都まで行ってきました。
母も行きたいと言い出したので、ちょうど敬老の日だし、と、両親も連れて、妻と4人で、家族旅行みたいな体裁にして、2日目の夜の部を観て来ました。
大学のサークルさんの劇というと、ほんとうにピンからキリまでなので、どんなレベルなのか皆目わからない状態で出かけたのですが、いや、びっくり!
ほんとうによかったです!
内容は、鈴木裁判編を独立させたもので、それに関しては
事前に把握していたのですが、作者としては、
1、 鈴木裁判編だけで、独立した作品として、観客に楽しめるのか?
2、 自分のペースで読める漫画と異なり、時間芸術である演劇で、観客は議論のスピードについていけるのか?
3、 マンガの設定では50分で収まっているこの議論がほんとうにそのくらいの時間でおさまるのか?
このあたりを気にしていました。結果は…すべてクリアされていました!
3に関してはまあ、単純に、自分のマンガに対する感心ですねw
正直、描きながら、「これ、50分+αでは収まってないんじゃね?」と思ったりもしてたんですが、
意外と、だいたいそんな時間に収まるリアルな話だったんですねw
ちなみに演劇は、1時間ちょっと。
もちろんカットされたやり取りもありますが、冒頭には夏祭り当日〜鈴木裁判勃発までの様子が、
映像と音声で説明されるシーンもありますし、後半では「@教育的指導!」のやり取りが、かなり長く挿入されていたりもしたので、プラマイゼロかと。
で、本題である、未踏座公演の評価なのですが、
まず1について。
稽古を見ていないので、どこまでが演出のくっきーさんの判断、手柄なのかわかりませんが、
一番「おおっ」と思ったのは、登場人物で小川と中村がカットされ、それが、独立した作品として楽しめるようにするために、とても効果的だったということです。
中村役を丹沢役が、小川役を松野役と太田役がとても自然に兼ねていました。
他にも、岬が、山際先輩役を兼ねることで、今カレの竹地との生々しいやりとりが楽しめたりして、単なる必要処理以上の効果が出ていました。
ちなみに、登場人物は、
鈴木先生、竹地、小菅、岬、土田、出水、太田、桂、河辺、駒井、丹沢、椿、松野、森、元木、吉井
です。原作では出席生徒33人だったので、だいぶカットされていますが、まだまだ大所帯。
初見のお客さんには、なかなか覚えられない人数です。
そこを、まずはそれぞれの役者さんが、自分お役の掘り下げだけではなく、ほかのキャラとの差異、役割を意識し、把握して、演じることで、かなりキャラの見分けがつくようになっていました。
それでもまだ、区別しきれない観客はいるでしょう。そのための対策もしっかりしていました。
おおまかに、グループとして認識することが可能なように、席が配置されていたんです。
下手側に、森達中心の、元気のいい、フツウっぽい生徒たち、
上手側に、吉井や小菅などの、マジメ系の生徒たち。
原作でも多少はやっていましたが、それがさらに徹底されて、上手対下手という図式でも
視覚的に認識可能なようになっているわけです。
これは単なる対立ではなく、基本的に原作でも、マジメな生徒が、強烈な長ゼリフを吐く、目立ち役になっていて、フツウな生徒がツッコミ役になっているので、上手側がメインステージ的に、下手側は、観客の代弁者的な位置になっているわけです。
基本的にそうなっている中で、後半に至り、下手サイドでずっとだまっていたカーベーが炸裂するのは、それまでと空間的に逆転するという衝撃もあり、効果的でした。
役者さんも、かなり原作に忠実に見えました。これも作者としては楽しみにしていたので、大満足です。母も妻も、「本物みたい」「まんまだね」と興奮していました。
先ほど挙げた、丹沢や岬のように、原作では分かれている二役を引き受けたキャラに関しては、丹沢の場合、ほんとうに丹沢+中村、というように、二人を兼ねたキャラになっていました。
あと、かなり期待していて、さらにそれ以上に良かったのは、松野と桂のシングルマザーに関するくだりや、吉井の童貞的な、太田の処女的な発言が、ものすごくシリアスに楽しめたことです。
なにしろ、マンガだと、あの絵柄にあの演出ですからw どうしても、ギャグ的な方に引っ張られる。
カーベーなんかも、初期は肉感的な感じだったのに、裁判編のあたりではもう妖怪か落書きみたいな絵になっていて…。これは、大きく見て、それこそ後悔はしていませんが、やはり初期の絵柄に未練はあるわけで…。ぼくのマンガの中ではあり得なかった、「初期の絵で、鈴木裁判」というような、生々しいヒリヒリ感を体験できました。カーベーの大胆発言のシーンの、竹地の狼狽は、マンガだとちょっと流し気味にしてしまいましたが、劇だと、ものすごく悲惨でしたし、こいつがカーベーと!という生々しさも相当のものでしたw カーベー自身も、マンガだと、ビッチ感がそうとう強くて、彼女の
放った、美しいセリフも、7:3くらいで、胡散臭い感じの方が強くなってますが、劇だと、つい手放しで本気で共感してしまいましたw
そのシリアスな盛り上がりに向けて、森達の男子生徒たちが上手に突っ込んで、導いていく感じも上手でした!まさに、受けて渡す、いい芝居でした。そういうのが上手な人を選んだのか、そういうの「も」得意だったのか分りませんが、すごく印象に残りました。原作にはない、細かい私語(突っ込み)も、リアルでした。マンガは、どうしても見開き2ページ単位での演出になりますし、毎回20ページ前後でいい区切りまで持っていかねばならないので、泣く泣くカットした「突っ込み」がたくさんありますが、それがちゃんと再現されていたり、あるいは、ぼく自身、まったく思いつかなかったけれども、「このつっこみ、いいな」と思えるものがたくさんありました。
2の、自分のペースで読める漫画と異なり、時間芸術である演劇で、観客は議論のスピードについていけるのか?という点についても、全然問題ありませんでしたね。
これは、役者さんがしっかり意味や効果を考えてしゃべっていたからというのがまずありますし、冒頭で夏祭りシーンを映し出した、正面のスクリーンを使って、黒板を再現した効果がさらによかったと思います。ちゃんと、議論が進むに従って、書かれる内容が増えたり、「今議論されている内容」がピックアップされたり、とてもわかりやすかったです。
あと、マンガでは思いっきりギャグテイストだったので可能だったけど、生身の芝居だと難しいかなと思っていた椿のボケぶりも、カンペキに再現されてましたね。大きい人だったのもよかった。あとで気付いたんですが、役者さんの名前、男の人みたいですけど、どうなんでしょうね?見ている間は、迷いなく女の子だと思って観てましたけど…。
マンガでも登場頻度の低い土田さんですが、最後に椿とやりあうところ、再現してくれてうれしかったです。
マンガよりも印象に残ったのは、いくつもありますが、前半では、駒井や元木たちの「出既婚の是非」のやりとりが、とても深く心に入ってきました。桂の「気付かないで否定」までの流れ、すごくよかったです。
そして! 鈴木先生、この人が生で観れたことは、やはり感慨深いです。
前半ほとんどうしろ向きで、中盤あたりからぐっと入ってきて、最後はドーンと持っていく感じでしたが、登場頻度に比例して、尻上りに吸引力がアップして行った感じでした。
この鈴木先生というキャラは、読者からも「実際いたらむかつく」という声も多い、クセのあるキャラですが、あの手この手で、そう見えないようにマンガでは処理してきたわけです。あとは、これまでのいろいろなエピソードを通じて、かろうじて、共感できるようになってきたということもあり…。
そういう意味では、マンガではおおいかくされていた、鈴木先生のトンデモ性が、冒頭ではすごく際立っていましたね。それが、登場してしゃべっていくにつれて、魅力的な人物に変容していく。マンガでは6巻かけてやってきたことが、劇中ではしっかり、鈴木裁判編だけでなされていました。
僕のマンガをどうもちゃんとは読んでいないらしい父も、劇を見終えた後、「テレビドラマにできるんじゃないか?」と言ってましたが、ぼくも、そう思いました。
劇を見てみたかった理由の一つには、実はその点を実感として確認したかったからというのもあったんです。今のところまだ、オファーばかりで、なかなか決定に至らず、といった状態で、実現するかあてにはならない状態なのですが、それでも、「実写化可能か」については、いろいろ考えておりまして。
もちろん、やればそれなりのものにはなるのでしょうが、重大なのは、ドラマ(映画)として傑作になりうるかどうかです。
この劇を見て、確信しました。もし、ドラマ(映画)化して、それが駄作に終わったら、それはそのスタッフ(キャスト)のせいだと!(笑)
マンガというジャンル特有のさまざまな技法を、ぼくなりに駆使しているこの作品ですが、それでも、スタッフになにかアイディアがありさえすれば、よいドラマになるはず、ずっとそう考えていました。その考えが正しいかどうかが、気になっていたのですが、すっかり迷いは消えました。
再演でもなければかなわないことですが、実写化決定の折には、スタッフの方には、今回の上演を見て欲しい!と思いました。
ものすごく多くの、よいアイディアに満ちていると思います。
ダラダラ書いてしまいました。まだ、たくさん書けることはあるはずですが、2点だけ書いて終わります。
一つは、照明の巧みさです。派手ではありませんが、中盤で、後半に突入する時に、くっと照明が変わりました。これがとてもよかったんですよね。細かく、細かく、地味に、いい効果をあげていました。
もう一つは、エンディングのよさです。マンガでは、下校シーンに持ち越した、生徒たちのさまざまな描写を、うまく教室内で表現していました。しびれたのは、最後に、掃除当番表をちょっと回していくところです。あれで、「エンディング」の空気が完成しましたね。かっこよかったです。